23年ぶりに

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岩手に越してきて初めて住んだのは、花巻だった。
花巻というと、今でこそ野球の大谷くんや菊池雄星くんが有名だが、引っ越した当時はそんな影もなかったから、何もない方言がキツい東北の地、という印象しかなかった。

北海道から越してくる前のエピソードは数々あるが、花巻でもそれは変わらなかった。

啓は公務員試験に向けて勉学の日々、私はというと右も左もわからず、言葉も理解出来なく途方にくれている時に目に入った広報、そこに抽選による喫茶店主募集とあり、喫茶店か〜、面白そうだな、応募してみるか、となり抽選会場に向かった。

抽選が始まる前に、「当選のくじを引いた人は如何なる理由があっても辞退は出来ません」、と説明があり、そうなんだ〜、って思いながら自分の番が来たのでくじを引いたら、当たってしまった!

嬉しい、とかはなく、えっ!当たったの?、ありゃ!、だった。

店主として喫茶を経営していた時間は短かったが、初めての土地での人脈作りには大いに役立った。
事業を行う際の資金計画や事業計画もこの時、啓と一から始めて學ぶ事が出来、それの応用で仕事の幅も広がって行った。
美味しい珈琲や香り高い紅茶を淹れられるようになったのも、この “当たり” のお陰だ。

喫茶Ravennaの入り口には、自分でデザインした花のイラストの玄関マットを作成した。
喫茶店を辞めてからもこのオリジナルマットを手放す必要がなかったので、自宅で使い続けた。

自宅仕様のせいか、2年に一度の新調の声も業者から掛からなかったので、そのまま使い続けていた。
最近、色褪せやほつれも目立ち始めたのと、事業支援した美容室の玄関マットの仕上がりをみて、大きさといい、新調のふわふわ感を感じない我が家のマットが、かわいそうになり、今の玄関口にあわせて、こちらから申し出て初めて新調した。

2か月後、サイズが変わった新調したマットが朝一に届き、玄関に広げた。
ふわふわしていてなんて可愛の……

今更ながら、何故一度も新調の声が掛からなかったのか……

どの位置に置いたら訪れるクライエントが玄関先でモタモタせずに上がって来れるかな、こっちか?この方が良い?すのこはどこに置く?……
Ravennaの玄関先から届く、太陽の光と川が運ぶ氣を浴びながら楽しんだ。

24年前、喫茶Ravennaにマットが届いた時のことが思い出されて来た。
初めてマットがパッと開いて敷かれた時、花が咲いたように感じた。
喫茶Ravennaのマットを一番に踏んでいらしてくれた尼の牧子さんの姿、美味しい珈琲淹れて!って入っていらしてくれた常連さんの方々、まだ中学生の息子の姿、公務員試験を目指して頑張っていた啓の姿など、様々な思い出が蘇った……。

新調したマットが玄関先に置かれて5日、誰も気づかない……悲し……まぁ、世の中こんなもんだよね。
人もマットも踏まれてなんぼだから、踏まれながら、がんばろうね!
新たな付き合いが始まった。

コメント

  1. naomi より:

    神先生は、あらゆるものをとても大切に扱っていらっしゃるので物持ちがいいと思っていましたが、玄関マット23年ぶりの新調と伺い驚きでした。

    ”今更ながら、何故一度も新調の声が掛からなかったのか・・・・・・”
    神先生の近くに長くいたいと、玄関マットが思っていたからではないか?と思いました。
    神先生、Ravennaの玄関先で新調の玄関マットの置く位置をいろいろ考えてくださってありがとうございます。

    目に映るものさえ見逃してしまっていては、目に見えないものなんて到底感じることはできないと思いました。
    敏感でありたいです。

    “人もマットも踏まれてなんぼ”と伺い、魂を磨くために踏まれながら耐え抜きたいです。

    • kaoruko kaoruko より:

      すごい!
      良い読み出来ているね。

      見えているものも見えてないのに……本当にそうです。

  2. おが より:

    拝読しながら様々な「あぁ」が過ぎりました。
    あぁ、神先生と岩手をつなぐ、思い出ある大切な玄関マットだったのだ。
    あぁ、本当に私は目に見えるものしか気付かない愚鈍なやつだった。
    (舞い上がっていましたが、足元のふわふわが心地よかったです。ありがとうございます。)
    あぁ、新たな付き合いは、玄関マットだけの話ではない。
    23年目の新調という変化は、椅子の数にも関わると読みました。
    玄関マットに振り落とされぬよう、掴みます。

    • kaoruko kaoruko より:

      おがちゃんの、”あぁ、”、が全ての気持ちを表してるねw

      “23年目の新調という変化は、椅子の数にも関わると読みました。”おがちゃん流深読みだね。

      ふかふか、感じていたのね、ありがとう。

  3. かなみ より:

    日々、作業ではいけない。
    ただ生きていると相手の想いにも気がつけないと教えて下さっていると捉えました。

    神先生が、訪れる人のことを想い、マットをご用意下さっている背景にこんなにも想いが詰まっていると想像力が働かず、そんな自分がマットを踏んでいたなんて大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。

    自分も想いを込めて日々物事に取り組むことが、様々な背景や想いが詰まっていることを想像し、1つ1つを大事にできるようになることに繋がると考えました。

    マットの写真の中に写っているうさぎさんをみて、気を引き締めます。

    • kaoruko kaoruko より:

      あのうさぎさんは、怖い、と思ったのはいいね。
      あなたは引っ張っている側?引っ張られている側?、どちらを自分に写したのかな?

      日々が流れ作業にならないようにね。

  4. ゆか より:

    ブログから、目の前のことや周りのことに鈍感だと知らず知らずのうちに人を傷つけていると學びました。
    また、鈍感だとあらゆることに気付かずに素通りしてしまう危険性、魂の成長のチャンスもないと、忠告と捉えました。

    神先生に「何か気付かない?」と聞かれるまで気付かない位、自分は鈍感過ぎる失礼な奴だと認識致しました。

    神先生がこの写真を撮る際も、うさぎさんや花の鉢やかご…様々思考されて撮影されたんだろうな…とブログを拝読し神先生の姿が思い浮かびます。
    益々先日のことを神先生に謝罪したいです。本当に申し訳ありません…。

    目の前のことに集中し、一つ一つ丁寧に、まわりのこと・相手のことに興味を持ち、敏感になっていきたいです。

  5. かなみ より:

    引っ張られている側に自分を写しました。
    手を離されたら、離したら終わり。
    そうならないよう、積み重ねを続けます。

    日々、流れ作業になっていないか振り返り、丁寧に過ごします。

  6. ゆみこ より:

    神先生が花巻にいらした時に、喫茶店主募集の広報を見てからの行動がずっと今にも繋がり、線になっていると思いました。
    今そのご厚意にあずかっている事をとてもありがたいです。
    感謝致します。

    ところが、いつもご迷惑ばかりおかけしていて、更に自分が踏む方だった事に大変申し訳なく思います。
    神先生がこんなにも考えてくださり、設えてくださったマットということに気に止めずにいた事にショックです。

    Ravennaにお伺いし始めの頃、神先生から初代マットをお作りになった経緯をお聴きしていた事を思い出しました。

    神先生がいつも相手のためにを考えてくださっているのが、よくわかりました。

    自分が逆の立場だったらどうかと考えられる自分になりたいです。